サングヮチャー

三月三日は、浜下りとヨモギ餅をつくる風習を伴っていた平安座の最大の行事である。 いわゆる上巳の節句(じょうし)である。 上巳とは、五節句のひとつ。陰暦3月初めの巳(み)の日、後に3月3日に主に女児の祝う節句で、雛(ひな)祭りをする。宮中では、この日、曲水の宴を張った。 桃の節句、雛の節句、三月節句、重三(ちょうさん)ともいう。 五節句とは、正月7日(人日)、3月3日(上巳)、5月5日(端午)、7月7日(七夕)、9月9日(重陽)、の5節句のこと。 浜下り、とくに女子は、浜下りをして禊(みそぎ)をするという観念である。 

浜下りには、次のような言い伝えがある。 昔、ある家の娘のところに夜な夜な美少年がかよってくるので、不審に思った家族が後を追ってみると、なんとこの美少年は、アカマターと呼ばれる蛇の化身であった。 アカマターは、巣にもどると、とりこにしている娘の自慢をなかまにしたあげく、娘が浜の白砂をふむと胎内に宿した子は、流れ出してしまうと話す。 これを聞きつけた娘の家族は、大急ぎで娘を浜に連れ出し、見事けがれのない元の身体にもどすというものである。

この伝説には、浜の白砂をふむことにより、けがれを清めるという民間信仰がふくまれている。海辺の白砂は、清浄なものであり、けがれを落とすものだという信仰は、祭りの広場によく白砂をしいたりすることでも知ることができる。 浜下りの慣行は、この日のみならず、家庭内になんらかの不吉な知らせがあれば浜下りをすることによって、息災を保つという習俗である。

旧暦3月3日から5日までの三日間行われる三月行事は、平安座の最大の行事である。 この期間、麦粉の平焼き三月ポーポーが食卓をにぎわす、よそに見られぬ平安座の名産である。  サングヮチャー初日神人たちが野呂殿内の火の神の前で杯を交わしながら次のように歌い、今日から三月節句であることを告げる。

くとぅし さんぐゎちや はちばちどぅ やゆる やいぬ さんぐゎちや ちゃわんうさ
(今年の三月節句はほどほどに 来年の三月節句は華やかに過ごしましょう)

部落としては、自治会役職員を中心に区民が酒肴携帯(酒肴を持ち寄り)で、俗称ンマラシ浜通りで祝宴を張ったが、昭和58年から今の自治会館に場所を替えた。 一方、女性達は、神人達を中心に2,30人の女性達がミーサチ商店前路上に集結して太鼓を打ち鳴らしサングヮチアシビを楽しんだが、今は、男女ひとつになった。

ドーグマチー

ドーグマチー旧暦3月3日(初日)の朝、ドーグマチーがある。 ドーグマチーとは、龍宮祭りであるとの伝承があることから「リュウグウマツリ」「ドウ―グウーマチー」「ドーグマチー」と訛ったものだろうと思う。 この祭りは、海難事故で死亡した身内の者のための慰霊祭で33年忌が済んでも永代につづけられる。それぞれが島の海岸で海難の方角へ向かって行う。供え物は、菓子、魚を入れた重箱一対とお茶、酒、白紙二枚、ウッチカビであり、カビアンジの行事である。この一年以内に新仏を出した家へは、親戚から一皿のご馳走が供えられる。

トゥダヌイューとナンザ拝み

トゥダヌイユー旧暦3月4日(二日目)トゥダヌイューとナンザ拝みが行われる。浜下り、ドーグマチーは、3月3日のみで終わり、部落は4日、5日と行事は続く。 特に、女性神人たちの女性グループでは、4日、魚を銛(もり)で突き刺す儀式がある。 この行事のことをトゥダヌイューと称している。 漁業者がかねて準備してある魚をまな板の上にのせて行う。他の婦人たちは、太鼓、手 拍子を歌にあわせてはやしたてる。歌は次のように歌う。

いじゆきや なじゆきや にらやぐむい かなやぐむい まくぶいゆや しいなふゆい たまみいゆや すぃまちゅい しらーちなや うちへりわ ゆしてぃくうわ うふあみし うちうすてぃ うふとぅだし ちちんきわあ ぬちんきわあ まがさーしや ぬしがにどぅ ながさしや ぬるがにどぅ
(ニライ海 カナイの海 マクブ魚は砂を掘って隠れる タマン魚は 渦を巻くように群れを成す 白網を大きく張れ 一心にひけ 取り込み網ですくいあげよ 大銛を打ち込んで突き捕獲せよ 大型のマクブは ノロ様にさしあげよう 美味なるタマンは ノロ様にさしあげよう)

ナンザ拝みトゥダヌイユーがすむと「ナンザ拝み」がある。かっては隔年毎に行われていた「ナンザ拝み」だったが、いまは、毎年実施されている。 自治会関係諸団体が揃い、島の東にある「ナンザ」と称する岩礁に行き、「太平洋に棲む魚群に向かい、平安座に押し寄せてくれと、大漁豊漁の祈願をして帰る。 「ナンザ拝み」から帰るころになると、神人と村人が浜に下り、三味線、太鼓、を打ち鳴らし、三月旗をあげて歌い踊り「ナンザ帰り」を迎える。 手ぬぐいや仮面、それぞれの仮装をこらし部落内を練り歩く。魚みこし、土人、シーシーパクパクと盛り上がり、夜の宴も遅くまで続く。

チナアギモーイ

旧暦3月5日(三日目)綱あぎ舞い(チナアギモーイ)  三日目には、漁民の綱あぎ舞いがある。東西の漁業団体が、それぞれ東から西から、三味線、太鼓にあわせて歌いながら進行してくるのを、区民が浜に下りて迎える。 綱あぎとは、網あぎのことだろう。東西の漁民と出迎えの区民が俗称ンマラシバマ で合流しンマラシバマ通りで祝宴を張る。最近は、簡素化され初日同様、自治会館で祝宴がもたれている。3日から5日の一連の行事をサングヮチャーと総称され平安座最大の行事で、それは海国にふさわしい。  

(文:下條義明)