ハイヤー(綱曳き)

平安座区では、カシチーバイヤーと呼ばれる綱曳きがある。

ハイヤー綱曳きは、カシチー(旧暦6月25日)の日におこなわれ、以前は、各家から1,2束の藁(ワラ)が提供されて、島中総がかりでハイヤーヂナがつくられた。 漁民は海止め、船人は船止め、をして大きな綱をつくった。 部落は、東西に分かれる。東組は、1班・2班・と3班5組から8組まで。 西組は、4班・5班・と3班1組から4組までと決められていた。 雌綱、雄綱は、毎年東西交互に定められ、西が勝てば世果報年、東が勝てば餓死年などという。またその逆の観念もあろう。勝負によって幸せを引き寄せようとするひたむきな姿勢が吉凶を占う要素であるが、ガーエー(ハイヤーモーイとも呼ばれた)という押し合いも勝負であった。 喧嘩沙汰になることがしばしばだった。 勝負前のミチジュネーは、壮観をきわめ、古来有名な按司、豪者に身をやつした13歳の若衆を乗せ、法螺吹き、鉦鼓打ち、太鼓打ち、旗頭持ちなどがついて、部落内をねり歩き「ワラクーヤビラ」に応じた家の前では、さらに気勢をあげた。 いよいよ綱引きの時刻になると、東西のシタク(若衆)を対決させ、大綱を持ち上げ、大声をかけながら雄雌の綱頭を寄せカンヌチを入れ、審判長の合図で一斉に綱を引き合う。その時の、掛け声は「ハイヤーハイヤーハイヤーハイ」である。

今日では、カシチー後の適当な日に綱曳きはあるが、この30~40年前までは、今に見る那覇、与那原、糸満大綱に、ひけをとらないものであった。

ハイヤー綱曳き行事は、豊年を祈り、勝負の結果で吉凶を占うとする行事である。 沖縄各地に見られるこの行事は、大きく分けて、6月ウマチーの頃に曳く綱と、8月15夜の頃に曳く綱に分けられる。  玉城村中山では、稲の刈り入れがすむ6月に、ミーメー(新米)といって新米を祝う日があり、子ども綱曳きがおこなわれ、6月24日にはまったく別の綱をつくり東(雄綱)と西(雌綱)に分かれて綱を曳く。  糸満市真栄里では、8月16日に綱を曳く。真栄里の綱曳きは、東のニライカナイから来訪神と幸と豊作を、西の現世にひきよせるための祭りであるといわれる。 そのため、西が勝つことで、豊かな幸がもたらされるとされている。

また、綱曳き後、綱の一部を海に流すのは、アブシバレーに見られる害虫よけ的性格があることをしめしている。

その他、綱を竜とみたて、それをおどらすことによって雨をよぶという雨乞い行事との見方もできる。

大綱で有名な糸満の綱は、8月。与那原の綱は、6月におこなわれる。那覇市の大綱曳きは、観光を目的とした「那覇祭り」(新暦10月10日)の催しものとして盛大に行われている。

(文:下條義明)